突き動かすのはワイン愛 ー 南三陸ワインで描くまちづくり

学生ライターの小泉です。

第2弾の今回は、昨年8月に着任しワイナリープロジェクトでワインの製造を担当する正司勇太さんにお話を聞きました。(第1弾の記事はこちら!)

千葉県出身東京育ち、前職は某中古本販売業と南三陸町とは縁のない生活を送っていた正司さん。そんな彼をこの町へと突き動かしたものは何だったのか。ワインへの想いとは。彼が修行を積むワイナリーでお話を伺いました。

 

【異業種からワインの道へ――そのきっかけは】

もともとワイン好きだった正司さん。せっかくなら自分の手で作ったワインを飲みたいとソムリエでなくワインづくりの道を選んだ。といっても、専門の勉強をしていたわけでもなければ特別ワインに詳しいわけでもない。まずは、石川県で移住体験をしながらワイン作りを手伝う1年間のプロジェクトに参加。体力的にも知識的にもこれからの見通しが立ち、正社員として山梨県のワイナリーで勤務し始めたころ、南三陸町でのプロジェクトを知った。

「日頃からワインに関するニュースをチェックしていたんですが、南三陸町のワイナリープロジェクトを知って、これしかないと思いました。」

 

ワイナリー経営の大きな課題の1つがお金。苗を植えてからブドウの収穫までに最低でも3年かかるワイナリー経営は金銭的なハードルがかなり高い。勉強しながら金銭的な支援が受けられるこのプロジェクトはうってつけだった。説明会に参加した時には応募することを心に決めていたという。

 

【ワイン作りは修行の毎日――正司さんの日々の活動】

「今はワインづくりの勉強に熱中しています。製造の仕方が悪いとか厳しく指導されることもあるけれど勉強は楽しいですね。それでも本当に好きで入れ込んでいる人に比べたらまだまだです。」

技術的にも知識的にもまだまだ未熟で今は勉強に追われているという正司さん。ここ半年間は宮城県内にある秋保ワイナリーで修行を積んでいる。それと並行して自分のワインを醸造するなどなかなか忙しい日々だ。しかし、正司さんの顔には笑顔が浮かぶ。

「ワインづくりはずっと勉強で、どんなにレベルの高いワイナリーでも挑戦を続けているんですね。ワインって毎年同じことをしていても味が落ちてくるので、常に挑戦と改良をしてとんとんぐらいです。だから作り手の個性が出る。それがワインの面白いところですね。」

 

【正司さんのまちづくり――ワインで描く未来とは】

「まず、ワインという新しい産業が南三陸町に生まれます。僕は金賞を獲れるワインづくりを目指しています。地元の人が誇りに思える商品を作りたいですね。」

 

正司さんが目指すのは「テロワージュ」。秋保ワイナリーオーナーの毛利さんが提案する、ワインと食のベストな組み合わせ「マリアージュ」と、その土地の気候風土を個性として表現する「テロワール」を組合わせた造語だ。

 

「今の南三陸は海鮮丼以外の選択肢があまりないので、イタリアンやフレンチが南三陸にできていけばいいかなって。南三陸産のワインを南三陸産の食材を使った料理と楽しみながら海を眺められる。そんな場所が合ったら最高だなと思うんです。」

「農業にも良いインパクトが与えられるかなと思います。農業というと、野菜や米などの農作物を作ってそのまま売る、そんなイメージが強いかと思いますが、実はワインづくりも農業です。ブドウをワインまで加工するとなると、その過程で付加価値をつける余地が生まれる。知恵の絞りようによっては高値で売ることも可能になるわけです。それってチャレンジのしがいがあるじゃないですか。近年、農業の衰退が叫ばれていますが、ワインづくりを通して6次産業のモデルを示すことで稼げない農業のイメージを変えるきっかけを作れたらなと思います。」

 

彼の夢はワイン製造に留まらず、ワインづくりを通した地域活性化や農業のイメージアップにまで及んでいる。将来は彼の様に経験や知識の無い人がワイナリー経営の夢を叶えられるような研修の場所を作りたいそうだ。

 

【ワイン第1号誕生にほっと一息】

これまでで達成感を感じたのは第1号ワインができたことだという。初めてのワインはパーティシーンで人気なスパークリングワインだ。


「誕生日の日に瓶詰したんですが、あれって最後に砂糖と酵母入れて蓋を閉めるんですね。そうすることでガスが生まれて発泡性のワインになるんです。ガス圧計を付けて毎日毎日確認していたんですけど1週間くらい何も変化が無くて、その時は胃が痛かったです…。やっと変化が出てガスもきちんと出ていたのでホッとしました。自分が作ったワインなので、まだまだ美味しい!と言えはしないんですが、1つ成果がでたことは大きかったですね。」

「僕が作りたいのは、香りがしっかりあって飲んだ後にも味がしっかり残るワイン。そして気軽に楽しんでもらいたいので気づいたら1本空いているようなワインを作りたいですね。ワインは作り手の性格も反映すると思います。自分はこだわりが強くて変な性格だから、変なワインになるかもしれません(笑)」

 

今年も第2号となるワインを作る。スパークリングワインに加え、酒税法改正によって今年から使用することが許可されたオークチップを使用する新しいワインにも挑戦するそうだ。

 

【正司さんが作るワインのこだわりは】

ワインづくりの勉強を進め、今年は醸造量を増やしたいという正司さん。彼が作るワインのこだわりには過去の経験があった。

「昔、オーストラリア産のあるワインが気に入って毎年数本ずつ買っていたのですが、ある年全然違う味がして、美味しくなくなっていてがっかりしました。けど、その翌年もう1度買ったらまた美味しくなっていたんです。同じブドウを使って同じ作り手が作っているはずなのに、こんなにも味が違うなんて面白いなと思いました。」

「南三陸でもブドウの出来に合わせて味を変化させて行きたいと考えています。お客さんに、今年はどんな味か、楽しみにしてもらいたい。最終的には南三陸の風土をワインに反映できるようになりたいと思っていますが、まずは、ブドウの品種の特徴をワインにしっかり反映できるようになるところからだと考えています。」

 

【応募者へメッセージ】

今年度はワインプロジェクトで経営を担当するメンバーを応募している。ワインプロジェクトの先輩として、どのような人と一緒に活動したいのだろうか。

「まずワインが好きな人。あと、気力と体力と熱意がある人ですね。ワインはおしゃれで楽しそうなイメージがあるかもしれないけどあくまで農業なので。基本は畑仕事や力仕事です。経営を担当する方でもそういった作業には関わることになるかなと思います。それを理解してくれる人がいですね。」

ソムリエが優雅にテイスティングする姿やフランスのきれいなワイナリーなどスマートな印象が強いワインであるが、あくまでもワイン作りは製造業であり力仕事。ワインの仕込み時期はかなり忙しくワイナリーに泊まろうかと思うほどだという。

 

【正司さんをワイン作りに没頭させるワイン愛】

一般的なイメージとは異なりかなりハードなワイン作り。そんな大変な仕事に没頭できるほどのワインの魅力とは。

「開けるまでどんな味がするかわからないドキドキ感が好きなんですね。時には裏切られた感じがする時もあるけど、それもまた良いなと(笑)ワインを開けてグラスに注ぐ。その時に良い香りがした瞬間はすごく嬉しくなりますね。」

「あと、良いワインって味わいが長く続くんです。家でワインを飲んだ後、外に買い物に行った時も口の中に味わいが残っていた時があって、良いワインを選んだなあと感じます。そんなワインにはなかなか出会えませんけどね。」

 

静かな口調ではあるが、ワインの魅力を語る正司さんの顔には笑みがこぼれていた。家で飲むのはほとんどワイン。ワインを飲むのも舌のトレーニングだという。「半分好きで飲んでいるので、仕事を理由にして飲んでいるって感じですね(笑)」と語っていた。

 

【もっと気軽に楽しんで】

大好きなワインで作りたい町のビジョンを語る正司さんは、私たちにワインをどう楽しんでもらいたいのだろう。

 

「単体で飲んで味がああでもないこうでもないと語るよりは、堅苦しくなく友達とわいわいしながら楽しく飲むのがいいかなと思います。ワインは食欲増進効果もありますし、ウィスキーや焼酎みたいに日常的にワインが食卓に並ぶ文化を作りたいですね。ますは南三陸からそんな土壌を作りたいと思っています。」

彼の目下の目標はワイナリーを南三陸町に作り、日本ワインコンクールで金賞を取りに獲ることだ。いずれは、自分が好きなピノ・ノワール(ブドウの品種)を使用した美味しいワインをそのブドウの栽培に適した土地で作りたいと言う。

「3〜4年前のことですが、ワインに詳しい友人の勧めでアメリカ産ピノ・ノワールを飲みました。良いワインだったので1~2年ほど置いてから飲もうかと思ったけど、待ちきれず空けてしまったんですが、その時の印象が忘れられないんですね。色々な味が絡み合い重層的な味わいがして、色は澄んでいてとてもキレイでした。飲んだ瞬間「ふわぁ~」と脱力してしまいました(笑)」

 

静かで低い物腰ながらも、ワインについて熱く語る姿にワインから広がる南三陸町の可能性を感じさせられた。彼のワインを南三陸町の美味しい料理と共に楽しむ時が実に待ち遠しい。

 

 

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プロジェクトの近況はfacebookページからご覧いただけます。

 

(文=小泉晴香。学生ライター。青森県出身。宇都宮大学国際学部に所属し国際社会学を専攻。昨年夏には復興庁が主催する復興・創生インターンで南三陸町に1か月間滞在。きれいな自然や人の優しさ、まちづくりに向け尽力する人たちと出会いこの町に魅了された者の1人。)

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