次世代の子どもたちに誇れる町を ー エネルギーが繋ぐ人と想い

学生ライターの小泉です。

第6弾が取り上げるのは、めぐる地域エネルギーのプロジェクト。プロジェクトパートナーである合同会社MMR(以下、MMR)執行社員の1人である佐藤克哉さんにお話を伺いました。

MMRは克哉さんをはじめ、佐藤太一さん、山内利也さんの3人によって震災後に結成され、現在は木質ペレットやペレットストーブの販売などを行なっています。そんな彼らがこのプロジェクトを通じて目指す社会とはどういったものか聞いてみました。

 

【原体験が彼を駆り立てる】

克哉さんは故郷の南三陸町を一度離れたのち、この町へ戻り有限会社山藤運輸を継いだ。その後ドライバーから丁寧にキャリアを積み重ね運送業一筋でやってきた彼が、エネルギー分野に踏み込んだのには、強烈な原体験があった。

 

「震災時、ライフラインが全て止まってしまい、2〜3ヶ月復旧しなかった。暖をとることもままならず、津波の被害から逃れても、濡れた体を温められずに寒さで死んだ人もいたんだよね。」

道路も寸断され、物流も麻痺。食べ物も飲み物も何もない、全てが不足した状況の中で克哉さんは、運送業の利を活かし地震発生の翌日から救援物資の輸送を開始する。

「水を持って行っただけでも涙を流しながらありがとうと声をかけてもらえたんだ。普段の運送業の仕事では正直、そんな風に感謝の言葉をもらえることはあまりないから、今までには感じたことのない、やりがいとインフラの重要性を感じたんだよね。」

 

そんな混迷の中で力を発揮した地域がある。町内では内陸に位置する入谷地域だ。この地域は農業が盛んで、震災当時も米の備蓄がされていた。薪を使用する文化も残っており、薪で炊いたお米でおにぎりを作り避難所に配布するなど、人々が日々の食の確保に喘ぐ中、大きな役割を果たした。ここから克哉さんはヒントを得る。

「木からエネルギーを生み出せるということを体感したんだ。そして、緊急時には外に依存しない地元でエネルギーが作り出せるような仕組みが出来ていなきゃいけないと強く思ったんだよね。」

 

【合同会社MMR誕生】

震災発生後の混迷の中、懸命に動く克哉さんのもとへ素敵な出会いが訪れた。のちに合同会社を共に設立することとなる山内利也さんだ。

「利也さんと出会ったのは2011年。瓦礫撤去を通じて、計画の取りまとめをしていた彼と知り合ったんだ。その頃の南三陸町は特に復興特需が著しかったんだけど、特需がなくなった後の危機感を強く持っていたんだよね。自社の経営や雇用維持についてね。」

 

2020年には必ず終わる特需に支えられた現状に漠然とした不安を抱えていた克哉さんは、1つの決心をした。アイリスオーヤマの大山社長が代表発起人となり開催されていた、人材育成道場・経営未来塾への入塾だ。

「未来塾で地元企業の経営者のコミュニティに加わり、メンタリングを受けながら自分と向き合うことができた。それまでも特需依存から脱却するために新しい事業を創ろうと思って行動していたつもりだったけど、小手先で模索していたにすぎなかったことに気付かされたんだ。」

「正直、自分は運送業が好きではなかったしやりがいもあまり感じていなかった。他にやりたいことだってあったんだ。けれど山藤運輸の佐藤克哉を捨てることはできない。それに気付いて、自分がやりたいことだけではなく、今の自分にできること、すべきことは何なのかを考えるようになったな。そして、新しい事業や未来に向けて挑戦するにあたってのマインドとして、出来るか出来ないかではなく、やるかやらないかだ!という強い覚悟を持つことが出来たんだよね。」

 

未来塾をきっかけに、液肥散布事業など新たな事業にも取り組み始めた克哉さんにまたしても出会いが訪れる。震災を機に南三陸町へ戻ってきた林業家の佐藤太一さんだ。

 

「太一くんから良い山を作りたい、山から出る間伐材をどうにかしたいという想いを聞いたんだよね。もちろん利也さんにもこれからの町づくりにかける想いがあって。この町には未利用資源がまだまだたくさんあって、それをどうにかビジネスにできないかという想いが集まってMMRが出来たんだ。」

違う道を歩んでいた3人が、南三陸町の未来を想う気持ちで結束を固めた丁度その頃。町が掲げるバイオマス産業都市構想が国の認定を受け、自立分散した持続可能な地域社会の実現に向けて各所の動きが加速し始めていた。その中心となる産業の1つが木質ペレットを使用したエネルギー供給だ。MMRはその担い手として手を挙げたのだった。

 

 

【事業の今、これからは熱い想いのある人と】

設立後すぐに木質ペレット事業に着手したMMRも設立4年目を迎えた。現在の事業の状況や今後の展望について伺ってみた。

「設立1年目は手探り状態ながら流通経路を作って、2年目には町の施設にペレットを使用するボイラーを設置してもらうことができた。3年目はより安定した販路を獲得するため受け入れ先を探してきた。今は流通経路の確立を先行して、他地域産の木質ペレットの卸売りをしているんだ。流通量は少しずつ伸びてきていて年間300トンにまでなったね。」

 

「目標は1000トン。これはペレット事業が自走するのに最低限必要な製造量で、かつ町内の森林経営に負荷がかからない量なんだ。だからまだまだこれからだね。需要拡大のために抜本的な手が欲しくて、それで今考えているのが宿泊施設や産業施設にボイラーを入れてもらうこと。そして木質バイオマス発電などの仕組みを合わせて地域のエネルギーを供給する役割を担うことなんだ。」

 

徐々にではあるが受け入れ先を増やし、順調そうにも見えるMMRの事業にもどかしさなどはあるのだろうか。

「もどかしさはあるよね。去年なんかは本業の忙しさや他に自分が進めている活動の忙しさなどが重なって、身動きが取れない状態だった。だから、MMRメンバーが忙しくて手が回らないところに新しい人の力が加わることで、このプロジェクトの動きは大きく加速すると思うんだ。」

「新しい人が来るのは超ウェルカム!自分たちには広い人脈と経営資源、そして情熱がある。このリソースを最大限に活用しながらどんどん実行に移してもらいたいな。うちらと一緒にこの町の未来を主体的に作ってくれるような人だと嬉しいね。」

 

 

【子どもたちが誇る町を作る】

このプロジェクトが見据えているのは「次世代の子どもたち」が暮らす社会だ。そこには子どもたちへのどんな想いが込められているのだろうか。

「俺にとっては子どもたちが笑っていてくれることが生きる意味。震災後の人口流出が著しい南三陸町ではあるんだけど、外に出た子どもたちが自分の故郷ではこんなすごいことをやっているんだと誇れる町にしたいんだ。」

「自分はこの町と人が好きで戻ってきた。自分の子どもたちにもこの町に戻ってきてもらいたいし、戻ってきた時には環境的にも経済的にも整えた状態で迎え入れたい。だからこそ、震災のような有事の事態にも負けない持続可能な地域エネルギーの仕組みはとても大切なんだよね。」

克哉さんの矢印は過去にも自分にも向かず、未来の南三陸町とこの町に暮らす未来を担う人々に向いている。

 

【事業のこれから、作る未来】

復興の終わりとされる2020年が迫りつつある今、どのようなビジョンを描いているのだろうか。

「事業としては3年で形にしたい。地域内のエネルギー供給の仕組みの構築までで言えば、子どもたちが大人になる10年、20年後かな。」

「まずはこの町でどれくらいの電気や熱エネルギーが消費されそうかを調査する。発電するにしてもどのくらいの発電量が見込めるかの調査も必要。木質ペレットだけでなくて太陽光など複数のエネルギー源をミックスすることも考えられるしね。そうやってまずはこの地域での最適なエネルギー需給の全体像を描いて、その上で木質ペレットの製造・販売事業、発電事業を立ち上げていきたいね。」

 

これまで復興に向けて走り続けてきた3人の目は今、復興のその先も続く取り組みへと向けられている。

「震災時にあれだけ困難な状況になってしまったのは、外部に燃料やエネルギーを依存していたから。それが地域の中で供給できるようになれば有事にも安心が保たれるし、収益が外部に流れることもないので経済的にも有効。技術革新も進んでいるから、EV(電気自動車)をエネルギー供給に活用したり、EVでモノや人を輸送する仕組みも作りたいね。」

 

外部に依存しない安定したビジネスを作ることに燃える克哉さんだが、そこで得られた利益も地域に返していきたいという。強烈な体験によって生きることの意味と対峙した彼の心は常に、大好きな南三陸町の明るい未来を作るエネルギーで溢れている。

 

【俺たちまるで三兄弟】

最後に、震災後に出会い今では共にビジネスをしているMMR3人の関係性について伺ってみた。

「人たらしの太一くんに、根っからの南三陸町民で人脈が広い利也さん、そして実務を担当する俺。各自の会社にある資源を共有しながら、それぞれの持ち味を生かしてる。結構うちらバランスいいんだよ(笑)」

 

ここでMMRの豆知識を1つ。Minamisanriku Marvelous Resource(驚くべき南三陸町の資源)の頭文字をとったこの社名。実は3人が好きなミステリー漫画の名前も由来している。

「南三陸とリソースを社名に入れるところまでは決まって、ほかに何かないかと考えていた時にあの漫画がパッと頭に浮かんだんだよね〜。太一くんと同じタイミングで「あっMMR!」って言ったのが懐かしいな(笑)」

 

これからの南三陸町の中核を担う若手経営者仲良し3人組。町からの期待は厚く、復興を推し進める旗揚げ役としてMMRは走り続けている。それぞれのフィールドを持ちながらも、南三陸町の未来を想う気持ちで固く結ばれている。ユーモアたっぷりの彼らと共に作り上げるプロジェクトはきっと、自分たちも笑顔で、そしてこの町の人を笑顔にするだろう。

 

 

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(文=小泉晴香。学生ライター。青森県出身。宇都宮大学国際学部に所属し国際社会学を専攻。昨年夏には復興庁が主催する復興・創生インターンで南三陸町に1か月間滞在。きれいな自然や人の優しさ、まちづくりに向け尽力する人たちと出会いこの町に魅了された者の1人。)

 

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