NCL南三陸 エピソード0 −こうして南三陸町は動き出した−

学生ライターの小泉です。

第7弾の今回はエピソード0と題した通り、地域おこし協力隊事業の始まりについて掘り下げました。なぜ南三陸町でこの事業が始まることとなったのか、仕掛け人である南三陸町商工観光課の宮川舞さんとNCL南三陸事務局長の山内亮太さんにお話を伺いました。(宮川舞さん=舞、山内亮太さん=亮、小泉=小)

 

Q. そもそもお二人の出会いはいつだったのでしょうか?

亮:震災の翌年でしたっけ?おすばで祭りで僕が声をかけたんですよね。舞さんが左手にメガホンを持って現場を仕切っていたところに駆け寄った記憶があります。

舞:すごく忙しいイベント中に声をかけられて、あの時は正直「あなた誰?」って感じだったよね(笑)

亮:そのあとメールでやりとりさせてもらった時の返事も遅かったりして、これはまだ信用されてないなと思って、めげずにメールしましたね(笑)

小:亮太さんはどうして舞さんに声をかけたのでしょうか?

亮:前職のNPO法人ETIC.に在籍中、人材を地域に送り込む事業に関わっていたのですが、その時にそういう形で地域に貢献できるってことを感じたんですね。そこで南三陸町で外の人の力を必要としているところを探し始めて、そしたら町の多くの人が、それなら観光協会、それなら宮川舞さんに話を聞くといいって言ったんです。

舞:正直はじめは信用していたとは言い難いんだけど、本気さって伝わってくるじゃないですか。亮太さんはものすごくたくさんの時間を費やしてこの町の課題や面白い動きを見つけて来てくれたんです。

亮:反対に僕にとっては、問題意識を持って動こうとしている地元の方がいたことはすごく大きかったですね。

舞:震災翌年には亮太さんが送り込んでくれた方と仕事をして、外の人と力を合わせることの効果を実感しましたね。

亮:彼の活躍はすごく大きなものでしたもんね。

舞:ほんとに。そこで学んだことは他にもあって、まずはこの町に何が不足していて何が必要かという気付き。地域の側からしっかり外に発信することの大切さ。そして不足している部分を補える人材をマッチングさせることを仕事にしている人がいることを知りました。

 

Q. お二人の信頼関係が徐々に築かれていったんですね。そこからどんなきっかけで現在の事業に繋がったのでしょうか?

亮:一緒に行った中越の視察ですよね。

舞:そうね〜。同じく地震があった中越の復興への取り組みは参考になりました。その中でもこれだ!と思ったのは、“外の人をいかに活かすか”ということ。彼らが地域の中でどんな活躍をして、どう地域が変わったのかを聞いて凄く感銘を受けました。きちっと地域の情報整理をすることで人は活かされるんだということを感じましたね。

亮:中越からの帰り道は忘れられない。暗いワゴン車の中、筆談で語り合いましたよね(笑)

舞:人を活かし育てるには、人のマッチングをいかに丁寧にやるかが重要だと思ったの。その機能がしっかりしていればいるほど人は活きるんだって。その頃には地域おこし協力隊の話が役場内でも出ていたので、この制度を使うことはすぐに決まったけど、それをどう活用するかにすごくこだわったよね。

小:どのような点にこだわったのでしょうか。

舞:私たちは協力隊の皆さんに行政の仕事を臨時的にやってもらうことが目的ではないと思っていて。

亮:制度を活用することで、最終的にこの町をどうしたいかという共通認識を作り上げることを重要視しましたよね。

舞:どこで協力隊に関する話をしても、その認識にブレがないようにしないと説得力が弱くなってしまう。だからそこに至るまでは随分議論を重ねましたね。

亮:中間支援組織の必要性があることは共通理解のところだったんですよね。そこで、私がこの仕事を受ける企業として手を挙げようと思ったんです。

舞:人材の育成・活用を考えたときに、1だから1じゃ通用しないことがあることも震災の混迷の中で学びました。1を2にも3にもできる民間のセンス・考え方を行政は取り入れて変わっていかないといけない時だと思うんですよね。いかに民営に近づけてこの制度を活用できるか。そう考えていたちょうどその時に、遠野市がNCLにこの事業を委託して運営しているということを知って、まさにそれだ!となりましたね。

舞:ちょうどその頃は、町の資源を活かした持続可能な地域社会の形成に向けて町内のプレイヤーが動き出していたのですが、その動きがまだビジネスにはなっていなかった時期。町が進もうとしている方向性を、単に計画としてだけでなくビジネスとして成り立たせることを同時に発進できたことが今となっては大きかったなと思います。

 

 

Q. 仕組みにまでこだわったこの事業。一つ一つのプロジェクトはどう作っていったのでしょうか。

舞:やろうと決めてからは早かったですよね。亮太さん地域の情報収集して!私は募集要項考えるから!という感じで。

亮:プロジェクトの種を見つけては話し合いましたよね。種を見つけたら、パートナーとなり得る地元の方たちに徹底的に話を聞くんです。そうすると皆さん面白い話を持っているんですよね。こんな動きがあるんだとか、実はこういったことをやりたいと思っているんだとか。そこに今の世の中の流れや、若者が面白いと思うだろうなというエッセンスを想像力をフルに働かせて取り入れています。あとはリリースのタイミングを見計らったり。

舞:一つ一つのプロジェクトの先にこの町の未来がありますからね。

亮:だからプロジェクトの背景と想いをきちんと伝えながら募集をしています。このプロジェクトを実現することで町の課題が解決されて、この町がもっと面白くなるように設計しているので、入ってきてくれる起業家を目指す皆さん自身もきっと面白いはずです。あと、この町に住み続けてもらうためにも、人の入れ方には気をつけています。

 舞:そうですね。それまで私たちがやってきたまちづくりは、地元の皆さんと一緒にやってきたもの。そうすると相手の温度がなんとなく伝わってくるんですよ。それを今度はまだ見ぬ相手に対して、この町のまちづくりを謳って巻き込んでいくって、受け入れる側も中途半端ではダメだ、とこの事業を始める時に感じました。この町は被災地で、やっぱり普通のまちづくりとは少し違うわけですよね。今は目に見えていないものを起業の資源にしていかないといけない。住民の皆さんの生活も完全に再建されていなくて、中には仕事も失っている方もいる。そんな中で起業家を育てる、外から呼び込んだ人を育てる、という看板を上げるにはやっぱり気合いが要りましたね。

舞:応募してきてくださる方々の人生に、それまで南三陸って深い関わりがなかったかもしれないわけじゃないですか。そんな中で一生懸命に自分に何ができるか考えて、説明会に足を運んで、面接に来て想いを語ってくださる。その想いに応えられるだけの形を示していかなくてはいけないと思っています。来てくださった方には、この町に関わってよかったと思える時間を過ごしてもらいたいですね。

亮:人間関係や歴史、風土まで、この町の色んなものを知り尽くして体感的に理解してはじめてこの町で何をしたら面白いかが見えてくると思うんです。僕もこの町に出会って7年になるけど、分かってきたのは5、6年目ですね。その感覚を協力隊の任期である3年のうちで得られるようにサポートしたいです。

 

Q. この事業を進める中で大切にしていることは何かありますか?

舞:1番はやっぱり外の力をいかに活かせるかということ。そのために町の人の理解を得ること。町の人の理解やサポートがなければ入ってくる人も不幸だしプロジェクトも形にならない。私たちはその架け橋にならなければいけないなと思います。

亮:人を誘致するところまでは出来てきていますが、そこから事業と人をどう育てるかは私たちとしても未知の領域。日々アクシデントが起きるわけですよ(笑)

舞:本当にそう!何もない週は逆に心配になっちゃうくらい(笑)でもまちづくりって、そうやって小さな出来事の集合体だと思うんです。どこかで誰かがつまずいて、それを乗り越えての繰り返しなのかなって。協力隊の皆さんは各自のプロジェクトを通じてまちづくりに携わっていると思っています。

亮:いかに起業家自身が町の一部となって、町の人を巻き込みながらポジティブなうねりを作っていけるかがこれからの課題ですね。

 

Q. お二人はこの事業の先にどんな南三陸町を描いていますか?

舞:町のみんながそれぞれに、「この町をどうしていこうか」と考えている、そんな町ってすごくいいなと思います。それぞれに考えがあると思いますが、そうやって考えを巡らせているということが大事だと思うんですよね。誰かが作った町でいいや、では何も動かないですよね。

亮:僕は新しいことに常に挑戦する人がたくさんいる町がいいなと思います。地元の人も外の人も一緒になって、挑戦してもいいんだと思えるフィールドを作りたい。この事業はまさにそのきっかけになると思っていて、この町の若者に挑戦する刺激を与えられるものだと思っています。何もなかったところにワイナリーができるんだ、起業家って生まれるんだ、とか。じゃあ自分にもできるのでは?じゃあやってみよう、そうなる人が1人でも2人でも生まれると面白いですよね。帰省するたびに地元が変わっててさ…と友達に話してもらえるようにしたいです。

 

 

Q. まだまだ成長過程だという事業を進めているお二人。今、何が楽しいですか?

亮:人と人をマッチングさせること。中心軸が違ってもどこかで想いが繋がる人たちが共同体を組んで何かを生み出されるような、そんなマッチングが好きですね。

舞:根っからの人好きなんでしょうね〜。

亮:一筋縄ではいかないような人が来ると燃えますね(笑)

舞:私はこの町に外の人が入ってくることで化学反応が起きて、それによって復興事業計画以上の結果を生み出せるんじゃないかという期待感を持っています。

亮:震災翌々日に凄惨な現場を見た自分としては、立ち上がった市街地に人を入れることで貢献できたらこの上ない喜びがありますね。

舞:あれだけの被害があった町なので、復興のスピードも生活の環境も、そこに暮らす町民の想いも本当に様々です。中には復興に向けて走っている人を妬ましく思っている人もいる。それでも、私たちはこれだけのことをやって来たと堂々と言えるように走っていないといけない。これは震災が起きたあの日からずーっと続いていることです。何十年後かに振り返った時に「あの時動いていてよかった」と思いたい。外から入って来た人々と地域の人々が一緒に走るきっかけの一つがこの協力隊事業なのかなと思っています。そうなれるようにここ数年が踏ん張りどきかなと。

舞・亮:いろいろとお話しましたが、あと数時間は喋れますね(笑)来年の今頃がどうなっているか予想がつかないくらい成長を続けている事業なんです。

小:今後、この町へ来た人がどんなうねりを作り出すのか楽しみになりました。今日はお話して頂いてありがとうございました。

 

 

(文=小泉晴香。学生ライター。青森県出身。宇都宮大学国際学部に所属し国際社会学を専攻。昨年夏には復興庁が主催する復興・創生インターンで南三陸町に1か月間滞在。きれいな自然や人の優しさ、まちづくりに向け尽力する人たちと出会いこの町に魅了された者の1人。)

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