クラフトビールで起業したい人必見! 遠野の田村淳一が教えるブルワリーの魅力

 

南三陸町は、2019年4月に「森里海のテロワージュ・ブルワリー」プロジェクトを推進するメンバーの募集を開始しました!(応募はこちらから)

そこで今回は、本プロジェクトのアドバイザーである田村淳一さんに、学生ライターの小泉がお話を伺います。
田村さんは一般社団法人Next Commons Labの理事でありながら、岩手県遠野市で「遠野醸造」の取締役を務めています。また、株式会社BrewGoodを昨年立ち上げ、遠野市のビールプロジェクト全体をプロデュースしたり、他地域のブルワリー立ち上げを支援するなど、ブルワリーを拠点に様々な活動をする仕掛け人です。

日本のローカルブルワリー界に新しい風を吹かせつつある彼に、クラフトビールやブルワリーの魅力、おもしろさ、そして南三陸のブルワリーにはどんな可能性があるのか教えてもらいました。

(た=田村淳一さん・こ=小泉)

 

【ビールは自由だ。】

 

 

こ:今回田村さんにお話を伺うということで、私もクラフトビールについて勉強してきました。ビールは好きでよく飲みますが、ペールエールにスタウトにIPAなど本当にたくさんの種類があるんですね。

 

た:お酒の中でも特にビールは多様性があって自由だと思います。小泉さんの想像を遥かに超えるレベルで何でもあります。木の香りを付けたビール、バジルや唐辛子のビールなんてのもあるんです。

 

こ:「とりあえずビール」という言葉があるように、ビールは手軽で間口が広いお酒という印象がありますよね。

 

た:最近は海外産のクラフトビールなど価格が上がってきている印象はありますが、乾杯するときの手軽さはやっぱりありますよね。フランクで自由なのがビールの面白いところです。ワインの酵母を使ってみたり、ウィスキー樽やワイン樽で寝かせてみたり、他のお酒との垣根すら超えていけるような自由さがビールにはあります。

 

こ:私にとって旅行の醍醐味は食べることと飲むことなので、そういう面白いビールが行く先々にあったらそれはもう幸せです。

 

た:そうですよね。あと、日本酒やワインを料理と合わせるっていうのがありますが、ビールにはまた違う料理との合わせ方があると思うんですよね。例えば、お寿司をすだちや大葉を使ったビールで合わせるとか。

 

こ:あ!副原料の素材自体と料理で組み合わせを作っているんですね。

 

た:そうです。ペアリングという言い方をして最近ではみんな色々やり始めているんですけど、そういうことができてくるんですよ。いわゆるワインに合うフレンチとかイタリアンとかそういう少しレベルの高いものではなくて、もう少しフランクに楽しめるような料理とお酒の合わせ方みたいな。そうするとバリエーションがさらに広がりますよね。

 

こ:自由で多様性がある、かつ手軽さを持ち合わせたビールだからなせる業ですね。

 

た:そうなんです。そしてこれはホップ生産地ならではの楽しみ方ですが、夏には手摘みしたホップをビールにそのまま砕き入れて飲んだりするんです。ホップの香りと苦みがぐっとアップして最高ですね。

 

 

こ:ホップ生産地だからこその特権ですね。ホップ生産は大変だと聞きましたが。

 

た:その通り、ホップは栽培開始から3年は収穫できませんし、収穫後はすぐに鮮度が落ちてしまいます。うちではホップ農地とブルワリーが近いので、夏にはホップ班と醸造班に分かれて醸造班がホップを入れるまでの作業をし、作業時間に合わせて収穫したホップを生のまますぐに投入するということをしました。出来上がったビールはとっても美味しくて好評をいただきました。ブルワリーの近くにホップ畑を作るところも増えています。

 

こ:ビールには色々な種類だけでなく、たくさんの楽しみ方があるんですね。

 

 

【クラフトビール✕まちづくりでできること】

 

 

こ:野菜やフルーツ、他のお酒など様々なものとコラボできる、その自由さがビールとまちづくりを結びつけやすくするポイントなのでしょうか。

 

た:そう思っています。ホップという原材料だけだと農産物にしかすぎませんが、それがビールとなると広がりがあります。例えば遠野では、伝統的な民話の語りを聞きながらビールを楽しんだり、ブドウやわさびに椎茸など様々な地元食材とコラボしたりすることができます。

 

た:また、アメリカのポートランドという地域がクラフトビールの先進地域ですが、そこへ行ってびっくりしたのは町の色んなコンテンツとビールが関わっていることです。ブルワリーを廃材センターの目の前に建てて、廃材センターで家具を作りながら木の香りがするビールが飲めたり、地元の音楽バンドとコラボしたり。

 

た:ビールは地元の様々な資源とマッチしやすいし、それが重なったときに新しい魅力として映ることがあると思います。南三陸でも牡蠣小屋に行けばオイスタースタウトが飲めて、ブルワリーに行けば地元のワイナリーで使われているブドウが副原料のビールを飲めるというように、地元の資源とコラボしてそれぞれが地域のコンテンツとして輝いていけば、その町を楽しむことができるようになると思うんです。

 

こ:町にある資源がビールでつながることでより輝きを増すということですね。つながりがあると町を回って歩くのもより楽しくなりそうです。

 

 

【1番のファンは自分たち】

 

 

こ:2016年に遠野へ移住してから今までで、1番嬉しかった瞬間はいつですか?

 

た:やっぱりお店をオープンしたときかなあ。お店をオープンしたときに色んな人が駆けつけてくれて、僕たちの会社で作ったビールを飲んでくれているのを見たときに、やったなって思いましたね。

 

た:僕たちは自分たちのビールが好きだし、自信をもって提供しています。その代わりに納得できないものは相当量捨てています。でもそれくらい自分たちで自信をもって良いビールだって思えるものを出しているから、誰かに認めてもらえると嬉しいですね。自分たちで自分たちのビールを飲みにブルワリーへ行くんですよ。

 

こ:田村さんはもともとビール好きだったんですか?

 

た:実はそうでもなかったです。お酒は好きだけど他のものが好きでしたから、そんなにクラフトビールに詳しくもなかったんですけど、遠野で関わり始めてからクラフトビールって面白いなと思って今はすごく飲んでいます。

 

た:僕がやっている別の会社は事務所がブルワリーの2階にあるんですね。「ブルワリーの上にある事務所ってめっちゃいいじゃん。」って話しています。仕事をしていて夜になったら階段を下りるだけでビールを買って飲めるし、月に4度の醸造の日にはホップと麦の甘い香りが漂ってくるんです。

 

こ:それは仕事をしながらも至福のひと時になりそうですね。

 

 

【南三陸ブルワリーの大きな可能性】

 

(南三陸町の海面にはいつも光が反射しきらめく)

 

こ:遠野は地域全体でビールの里構想を掲げていますが、南三陸が掲げているのは「森 里 海 ひと いのちめぐるまち 南三陸」です。南三陸ではどのようなブルワリーが実現しそうでしょうか。

 

た:南三陸には色んなコンセプトのブルワリーができる可能性があります。ワインと海産物、そこにビールというお酒と食の組み合わせを押し出した美食要素の強いブルワリーか。被災地としてその文脈に何かかかるブルワリーか。町が掲げている循環型社会に関わるようなブルワリーか。可能性はいっぱいですね。

 

た:まずはそういうコンセプトをきちんと作る必要があります。ブームに乗って、今や年間約100件もの新しい醸造所ができています。これはビールの飲み手の拡大スピードよりも上です。だから、どういうブルワリーにしてそこで何をするかが見えていないとビジネスとして成り立たせるには難しいんです。

 

こ:そんなにたくさんの醸造所ができているんですか。驚きました。

 

た:そしてもう1つ大切なのが、面で捉えるということです。これはブルワリー単体の話ではないんですね。単体で捉えるなら、有名なブルワーを連れてきて秀逸なプロダクトを作って攻めるという手もあるけど、南三陸の場合はうちと同じように面で捉えて地域資源をつなぐようなブルワリーになるといいのではないかと思っています。

 

こ:遠野ではどのような取り組みを行っているのでしょうか?

 

た:ビアツーリズムを行っています。ホップ畑でBBQをした後にうちのブルワリーへ行ってビール飲むなど、地域のコンテンツをビールでつなぐツーリズムを去年から本格的に始動しました。

 

 

こ:そういうツーリズムがあると地域の中の人と外の人が交流することになりますね。

 

た:そうですね。地域の外の人と交流することで地元の人の意識も高まるし、新商品のテストをすることもできます。そして大事なのは、地域の外から人が来ることでちゃんと地元が儲かることです。

 

た:例えば、最近は地元の酒屋って元気がなくなってきていますよね。うちでも1年前ある地元の酒屋さんに、自分もビールで何かやりたいと言われました。そこでビアツーリズムにホップの焼酎を酒屋で飲むプログラムを組み込んだんです。その酒屋さんではもともとホップの焼酎を売っていたけど、あまり人は来ていませんでした。ビアツーリズムで人を呼び、その人たちが商品を買っていく、地元の人はお客さんの反応を見て次の仕事のやりがいや参考にする。単にまちを活性化しようと言うよりも、地元の人は積極的に地域のことを考えてくれるようになっています。

 

こ:きちんと地域に儲けがあることで、地元の人やお店全体でまちづくりをすることにつながるんですね。

 

た:今は遠野の話をしていましたが、南三陸でもそれができればいいと思っています。南三陸には牡蠣小屋があったり、美味しい海鮮丼のお店があったり、特産の杉を山に行って見学できたり、農業のお手伝いができたり、ワイナリーがあったり、そういう場所がバラバラに存在している状態です。そこに多様性があって自由なビールが入ってそれらをつなぐことができれば、町に行く理由ができるし町全体を楽しむことができると思うんです。

 

 

【ブルワリーのその先を見つめて】

 

 

こ:本日はありがとうございました。ホップ畑、ぜひ見に行かせてください。

 

た:ぜひ。僕らも夏が楽しみです。今でもたまにホップ畑の写真を冬に見たりしているんです。ホップ畑ってやっぱり綺麗なんですよ。ベストシーズンに畑へ行くと、ここで仕事していてよかったなって思える景色が広がっています。

 

こ:働く人がそう思っているって素敵ですね。それでは最後に、南三陸のブルワリーに興味がある方へメッセージをいただいてもよろしいでしょうか?

 

た:そんなに簡単な商売でもないし大変なこともあるんだけれど、僕らはやっぱりこの仕事は面白いと思っているし、僕らの地域に関しても日本のビールにとっても意義があることだと思っています。だから応募される方に関しては、いわゆるビールが好きでブルワリーを作りたいというだけではなくて、その先にビールを通じて何がしたいのかとか、南三陸だからこんなことがしたいんだとか、そういうことを聞きたいですね。ブルワリーの先に何を考えどんな想いがあるのかを知りたいし、同じことをやっている1人の人間として議論したいです。そして、新しいものを生み出せるなら一緒にしたいと思っています。

 

こ:本日は貴重な時間をありがとうございました。南三陸のビールが町のどんな資源とコラボして新たな価値を生むのか、ビールでつながるネットワークが町をどんな姿へ導いてくれるのか、とても楽しみになりました。

た:こちらこそありがとうございました。

 

 

 

いかがでしたか?

南三陸町は「森里海のテロワージュ・ブルワリー」の立ち上げメンバーを募集をしています。このプロジェクトに興味を持った方、応募したいと思った方はこちらをご覧ください。

「ビールが大好き」「ビールを自分の手で作りたい」「ビールと食べ物やイベントを掛け合わせたい」と思っている皆さんのご応募、お待ちしています。

 

(文=小泉晴香。青森県出身。この春宇都宮大学国際学部を卒業。2017年夏に復興庁が主催する復興・創生インターンで南三陸町に1か月間滞在。きれいな自然や人の優しさ、まちづくりに向け尽力する人たちと出会いこの町に魅了された者の1人。)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です