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森を感じるプロダクトを南三陸から世界へ届ける − 里山のデジタルファブリケーション工房の挑戦

NCL南三陸で新たに募集を開始した、里山のデジタルファブリケーションプロジェクト。
本プロジェクトのパートナーであるYES工房・代表の大森丈広さんにお話を伺いました。

 

【ものづくりをアップデートする】

入谷八幡神社の入口、のどかな田園風景を臨む坂の上にたたずむYES工房。

南三陸町に雇用と交流の場を生み出すことを目的に、2011年に設立されました。
廃校工房→ハイ工房→YES工房、というジョークから命名された(!)名前には、震災後の町の復興に向けた前向きな想いと、どんな仕事に対しても「Noと言わない」という強い想いも込められています。
かつて仙台藩での良質な杉の産地として植林が奨励されてきた歴史をもち、美しさと強度を兼ね備えた南三陸杉を活かした木製品。

1900年のパリ万博でグランプリを受賞したほど高品質な生糸を生産し、養蚕を行なってきた歴史と文化を伝えるまゆ細工製品。

南三陸町の名産であるタコをモチーフとした、「置くと(試験に)パス」する縁起もの、オクトパス君。

これら3部門のプロダクトの制作・販売と、ワークショップなどの企画・運営を、南三陸町出身の方を中心とした10名のスタッフで行っています。

 

 

木製品部門では現在、大森さんを含む2名のデザイナーと、2名の職人さんで、テーブルウェアや収納ラックなどを製作しています。
この木製品部門を発展させ、町に新たな雇用と交流の場を生み出そうとするのが、デジタルファブリケーションプロジェクトです。

 

中学校の校舎跡をリノベーションした工房には、レーザーカッター、UVプリンターといった装置がすでに整備されており、さらにこの夏にはデジタルデータを元に木材を加工する米国発の最新鋭装置shopbotが導入されます。

これらの機材をフル活用し、”ものづくりに対する概念をアップデートする”と、大森さんは意気込みます。

 

「これまで、shopbotをすでに導入されている事業者さんを中心に、都内の色々な店舗を見学させていただきました。訪れるたび、都会の洗練されたセンスにはとても心が踊り、つい自分でも買いたくなってしまいますね(笑)

一方で、この地域だからこそできることもあると感じています。

プロダクトをつくるには、木材が必要ですよね。
ここ南三陸では、その木材を伐採するところから間近に見ることができる。
これはあの山から切り出された木材でできたものなんだ、とリアルに実感していただけるプロダクトを提供することができます。

さらには、山の持ち主さんや管理者の方々と対話をしながら、今度はここのエリアを切ろう、このエリアは将来を見据えてこうした種類の樹木を植えようというように、山の経営計画を話し合い、それに合わせて工房で制作するプロダクトのラインナップを変化させていきたいと考えています。これはかなり長期スパンでの話になりますが、山の経営とリンクしてラインナップが変わるなんて、すごくダイナミックで面白くないですか?」

 

大森さんはそれぞれの木材の良さを活かしたデザインを心掛けたいと言います。

「まずは、この町が長年に渡って育ててきたブランド”南三陸杉”を活かしたプロダクトを強化したいですが、その先は、サクラ、ヒノキ、ナラ、クルミなど、広葉樹も組み合わせてラインナップを増やしていくつもりです。
手にとっていただけるとよくわかると思うのですが、木の種類によって、色味、重さ、木目、硬さ、香り、それぞれ全然違って面白いです。複数の木材を組み合わせると表現の幅もグッと広がって、アート作品のようなスタイリッシュさから、お菓子のような可愛らしさまで表現できるんですよ。」

 

 

「大量生産される既製品を使うのではなく、もっと気軽に自分の好みに合ったオリジナルのデザインを生み出し、楽しむ。
ここには木材の活かし方に通じた職人さんがいるので、彼らの経験や知恵とデジタルファブリケーション技術を取り入れればそれが可能です。まさに、アナログとデジタルを融合したプロダクト開発を実現できる環境が、ここにはあると思っています。」

そんな世界観を多くの人に体感してもらいたいため、デジタルファブリケーションのスキル習得に向けたオープン講座も今後開講していく予定とのこと。

 

 

また、工房では年間1,000名以上のワークショップ体験者を受け入れており、年々増加しています。

「参加者の皆さんには、工房で彫刻や組み立て、ペイントをしていただくだけでなく、実際に森に入って木材の伐採の現場を見学していただいたり、南三陸町のビジョンや森・里・海の循環について知ってもらう機会を取り入れたりもしています。
ものづくり体験を通じてクリエイティビティや設計力を養うだけでなく、林業を知り、地域を知る。一つのプロダクトが出来上がるまでに多くの人々が関わり、様々な想いが込められていることを肌で感じる。これは都会ではできない、地域だからこそできる体験だと考えています。」

 

【地域の若者が憧れる就職先に】

デジタルファブリケーションプロジェクトを通じて、大森さんが実現したいことはもう一つ。
それが工房の設立目的でもある「雇用の場の創出」です。

「今は水産業、観光業、サービス業などがこの町を支えていると思いますが、それ以外の分野でももっと雇用の場を生み出したいんです。
先ほどもお話したとおり、ここではユーザーの声、木材生産者の声、双方をダイレクトに感じ取りながらプロダクト開発に取り組むことができます。shopbotを導入することで、3D/2Dデータの共有も簡単にできるようになるので、日本全国さらには世界のユーザーやクリエイターと繋がることができます。ローカルにある良い材を使って、グローバルなデザインを生み出していきます。

僕自身もそうでしたが、この町には町の役に立ちたいと考えている若者は多くいます。一度外に出ていても、いつかはまた戻りたいと考えている人も少なくないと思っています。そんな若者が憧れて就職してくれる先に、この工房を育てていきたいですね。」

 

 

【センスを磨き合える関係を】

大森さんは、デザイン学校を卒業後、東京都内のデザイン会社でゲームアプリや待受画面のデザインなどを行なっていました。
震災を機に南三陸にUターンしたのち、2012年にYES工房に加入、数多くのプロダクトのデザインを手がける傍ら、広報を務め、昨年6月に代表に就任しました。

そこからの1年で工房のビジョンをぐっと磨くことができ、今回のメンバー募集に至ったと言います。

そんな大森さんが新しいメンバーに期待することとは。

「デザイン会社の時の経験から、僕はどちらかというとゆるさのある感じやかわいらしい感じのデザインが得意で、洗練されたスタイリッシュなデザインについてはまだまだセンスの向上が必要だと感じています。そこに強みのある方が来てくれると嬉しいですね。切磋琢磨し合いながら、お互いに個々人のセンス、スキルを磨いていきたいです。」

 

個を尊重する一方で、チームとしてアイデアを出し合い、形にしていくプロセスも大切にしたいと言います。

「一見くだらないようなふとした会話から、思わぬアイデアが生まれたりするんですよね。あーでもないこーでもないと話し合いながらお互いの感性を磨き、アイデアを昇華していく、そんな関係性が築けると良いなと思っています。
大手企業では出来ないような、小さい企業だからこそ出来る、企画、開発、製造、販売までの流れをぜひ楽しみながら、学び、自分の世界観やセンスをどんどん出していって貰えると嬉しいです。
地域に根ざしつつも、世界のクリエイターとつながる最先端のものづくりを一緒に体現していきましょう!」

 

 

南三陸町は「里山のデジタルファブリケーション工房」の推進メンバーを募集しています。このプロジェクトにご興味を持った方はこちらをご覧ください。
皆さんのご応募、お待ちしています。

 

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